西部劇の未来?

コーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』を難儀しながら読了。

ブラッド・メリディアン

ブラッド・メリディアン

実在したインディアン討伐隊とインディアンとの凄惨極まる暴力の応酬と、会話文を使わずイメージを重層的に継ぎ足してゆくなどの技巧的文体が、普通に読んだだけではイメージも意味も掴めないほど常軌を逸しているためだ。ノーベル文学賞最有力候補といわれるアメリカ文学の巨匠の1985年の代表作が昨年末にようやく邦訳された。恥ずかしながらコーマック・マッカーシーを初めて読んだが、フォークナーと比較されることも多いということも頷ける。
ノーカントリー』で弾みがついたのか、相次いで映画化が控えている。
http://www.imdb.com/name/nm0565092/
『ブラッド・メリディアン』は、リドリー・スコットが監督を降板し、トッド・フィールドが継いだらしい。訳者解説によると、ニーチェをモデルにした禿頭で2mを超す巨人である判事("the judge")が戦争や悪の必然性をとうとうと説き(つまりjudgeし)、虐殺したインディアンの頭皮を剥ぎ、子供から子犬まで容赦なく殺し尽くし、血と泥と糞尿にまみれ砂漠を彷徨し、町に辿り着けば有り金を酒場と娼婦につぎ込み楯突く男達をあっさり殺すこの小説を、どう映画に撮るのだろうか。クローネンバーグの傑作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセンが主演した『ザ・ロード』も、今年度の日本公開が控えている。しばらくマッカーシーに振り回されそうな気がする。
http://www.theroad-movie.com/