25年後の世界のための祈りなのか?/1Q84/村上春樹/2009/新潮社

久しぶりにいい天気だったので、Tシャツとカーゴパンツ姿に着替えて、2時間くらい散歩をした。
Sonic Youthの"the eternal"を聞きながら歩いていたのだが、このアルバムは本当に名曲ぞろいで驚いてしまう。
今年に入って聞いた全ての新譜のなかでも抜群に良い。 "the eternal"に相応しい彼らの代表作になるだろう。

折り返し地点の休憩がてら、成城の駅ビルの本屋に入ったのだが、入り口の平台では、やはり村上春樹特集を展開していた。印刷が追いつかず品切れというニュースの通り、『1Q84』の場所は大きく窪んでいた。

一方、アマゾンのコメントでは、長年のファンと思しき人たちの、割と的確な「期待はずれ」に関する文章が掲載されていて、僕もそれに同意するのだが(退屈で読むのが苦痛だった)、他方、頭にあるのは、「祈りの言葉はすでに全部書かれているのです。あなたはそれ以上ふやす必要はなにもないのです。」という言葉だ。

作曲家としてどのようにすれば進歩できるのか、と尋ねたArvo Pärtに、修道僧が答えた言葉だ。
その言葉は彼の心に深く響き、そうして簡素に作られていった祈りの曲は、今なおゴダールガス・ヴァン・サントのフィルムで召還され、50年以上の時を経て極東に暮らす僕のような者にさえ、届けられるのであった。



http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%BC-%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E7%89%88-DVD-%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%88/dp/B0007N3750/ref=sr_1_18?ie=UTF8&s=dvd&qid=1244378225&sr=8-18


梅雨と総選挙を控えた2009年の日本に、あるいはスピリチュアルだの公明党だの幸福の科学だのその他のオカルトだのが跋扈する風潮に、50万人の読者が1000ページに及ぶこの新刊を手にする、というのは、私設の臨時マスメディアとしての作用/インパクトも鑑みるべきではないのか。日本において、村上春樹の他に、どのくらいの小説家が同じような私設臨時メディアとしての新刊発行を行えるだろうか。ごくごく少数ではないだろうか。さらには、2009年の25年後(1984年から50年後)の世界の多数の国々の人々が、神話の組み合わせのようなこの物語の単純さこそを、受け入れているのかも知れない。

何しろ、青豆/Green peas(Peace)と天吾/天の我を主語として、1000ページに渡って英語圏や漢字圏(そんな言葉ないけれど)の読者は読み続けるのだから。何千回、このGreen peas(Peace)と天の我という言葉が繰り返されるのだろう。南無阿弥陀仏を唱え続ける修行僧のようなものだろうか。

小説を書く、それも日本を代表する小説家として、世界に向けて新作を届ける、ということを考えたときに、単純で神話的で自分の業となってしまったテーマ(それこそ、村上春樹が翻訳をするティム・オブライエンにとってのベトナムのように)に挑み続ける(だから「王」の死とその空白を別の接点で継承する(編集者、原案、脚本家による機能分散統治)、あるいは捕えられてしまう、視野に入れないことは、あまりフェアではないのではないだろうか。それが魅力的なものかは別問題だが。

という観点も、来月あたりに出揃うであろう、主要文芸誌の書評では触れたものが出てくれればなぁ。


個人的には、book3以降で挽回して、『我らが歌う時』のような傑作になってくれることを願っておりますが。
それにしても、近年のインタビューや翻訳の解説などで、他の作家から学んでいるような発言をしておきながら、あまりそれが自作に反映されていないように思えるのは何故だろうか。book1,2は、何と言うか、呆れる程つまらない。それから、映画や音楽のセンスがあまりよろしくないような・・・。だって、キューブリックだぜ・・・。欧米の読者なら失笑する人もいるだろうな。とりあえず、映画はあまり見ていないだろうな。想像力の世界に引きこもり過ぎるから、現実から乖離していってしまうのだろうか。

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%89%E3%81%8C%E6%AD%8C%E3%81%86%E6%99%82-%E4%B8%8A-%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/4105058711/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1244377346&sr=8-1

で、ここから業務連絡の続きで、お國さんと相談して、まずは夏フェス相談飲みをしようということになりましたので、
都合のいい日を教えて下さい。あと、『1Q84』が売り切れで読めないという人がいればお貸ししますよ〜。