『オルエットの方へ』ジャック・ロジエ

ようやくジャック・ロジェ特集の1本を見る事が出来た。
土曜の最終回だというのに、7割くらい客席が埋まっていて嬉しい。
その前に隣のスクリーンで見た『イエローキッド』のいい所、いまいちな所を思い返し、少し疲れていたのだが、映画がスタートすると、そんなものは吹き飛んだ。

いい映画はオープニングからいい。恥ずかしながらジャック・ロジェは初見だったのだが、冒頭の女の子3人が笑い転げながら重たいスーツケースに手間取りながら砂浜を登って行くシーンで、いっぺんでファンになってしまった。映画を見ていて、幸福を感じる瞬間というのは、とても貴重だと思う。映画でしか表現出来ない技法によって、ショットが積み重ねられてゆく。瞬間、瞬間が映画によって更新されてゆく。ああ、いいなぁとバカみたいに思い続けた160分だった。

別荘に着いてはしゃいでいるだけの時間もいいし、オルエットの発音ネタなんてフランス語を習いたての大学生みたいなのだが隣の席のフランス人っぽい女性も爆笑してたので本国の人にも面白いみたいだし、ヨットのシーンは本当に良かった。双眼鏡のシーンやキレた上司が皿を割ったシーンでのクローズアップ、そして残された2人が本当に静かねと出窓に腰掛けてキャンドルと手すり越しに見える夕暮れの海のシーン。いい、いいとしか書いてないけれど、それしか書きたくない程いいのだ。あまりにいいので、本当に久し振りにパンフレットまで買ってしまった。

寄稿を読めば、いろいろと演出の工夫などを知る事ができるのだが、予備知識なしで、映画に詳しくなくとも心から楽しめると思う。19日までなので、他の予定を差し置いて、ぜひ見て下さい。
下のリンクで大久保さんが熱っぽく「勧誘」をしている理由も、1本見てよく理解出来た。
映画を見る喜びに溢れたプログラム。残りのプログラムも早く見に行きたい。


ジャック・ロジエのヴァカンス
http://www.rozier.jp/index.html

参考に
http://www.nobodymag.com/journal/archives/2010/0123_1416.php
http://d.hatena.ne.jp/SomeCameRunning/20100124