恵比寿駅にて

文芸誌二誌を読むうちに、完全に目が冴えた。同時に、頭の中で小説が始動してうるさくて溜まらなくなり、3時間ほどimacに向かっているうちに、朝になった。
朝食を終え、図書館に寄った後、天気もいいし、ふらっと横浜にでも行くか、と思い立つ。
恵比寿駅で山の手線を降りようとドアに近付くと、ドアの前に知人と思しき女性が。5年振りに見た。相変わらずほぼすっぴんに近い顔と姿は薄い色の秋の青空のように清涼できれいで、とても5年の歳月を経たとは思えず、当時のまま抜け出て来たかのように思えて狼狽えた。こちらは黒ブチメガネ、レンズの上にまでかかった前髪、数日剃っていない無精髭。その上、徹夜明けの青白い顔とクマ。
もしこちらに気が付いたのであれば、亡霊のような姿にうつったことだろう。恵比寿駅を出たようだ。京浜東北を待つ間、先程の一瞬の姿を反芻する。果たして僕は? 5年分、脳の中身は成長したのだがそんなものは見えやしない。そもそも、成長したのか。見栄ではないか。そう思うと、ますます姿が透けてゆくような気がした。先生の元で研鑽を積んでいるかと思う。  頑張って下さい。

無情な横浜駅との戦いに敗れた亡霊。ふら〜。