SONIC YOUTH /"Massage The History"("the eternal")

mp3の普及の功罪は多々あれど、歌詞カードを読まず、アルバムを通して聴かない人たちが増えたことは、とりわけ非英語圏にとっては深刻だ。日本のロックバンド、特に若手の質が急下降をしている要因のひとつに、どうしようもない歌詞の酷さがあるのだが、本来それを叱咤する役割が期待されるロックの(音楽)評論家というものが、日本においてはほぼ絶滅している。大学に一年も通えばごくごく初歩的な精読の技術が身に付き、それが読解やひいては作詞に繋がるはずなのだが、欧米のその水準とは溝が深まるばかりのように思えてならない。

"the eternal"は、12曲目の"Massage The History"という曲で終わる。

Oil dripping on my head
Bring you back
From the dead
From the dead
Here's wishing you were here with me
Here's wishing you we could massage
History,history
I'm witness to what you do,
Anything that you feel
In between,in between,
You and me
Bound at sea
Floating on debris
Yr so close, close to me
Yr so close, close to me


debrisとは、事故や爆発などの破片、残骸。あるいは廃棄物。
それ以外は、注釈が不要なほど平易な言葉で書かれた歌詞である。
錆び付いた身体から漏れ出すオイル。BIG3のうち、2社が破綻をした今、アメリカ合衆国がその機能を回復するためには、新たな「聖油」でもって、疲弊した体を揉みほぐさねばならない。それも頭から。海の残骸の上にかろうじてしがみついている"You and me"の距離は、かつてないほど近付いている。だからこそ、Oil dripping on my headであり、on your headではないのである。

アルバムの8曲目の"Malibu Gas Station"では、

Malibu gas station
pumps up the nation
a tough cross to bear
oops no underwear

と歌っている。"no underwear"な恥知らずは、ブッシュであり、名実ともにアメリカ合衆国を背負う立場の世代の一人となってしまったSONIC YOUTHである。新たな「聖油」などない。

Malibu gas station
On face the nation
California magik
A tan so tragique

tragiqueは、tragi"c"。Malibu gas stationのあるカリフォルニアでは、もはやマジックの輝きではなく、合衆国の悲惨さに直面する他ない。悲惨であっても、Oilにまみれて、硬直した部位に新たな血液を送り込まねばならない。