圏外/県内/out of intertextualities/Whenever You're Ready

二つだけ。今日で終わった。それからもう限界だから出る。最後くらい、黙って信じてくれ。

五時頃に一度起きると、アラン・ポーが階段を駆け上がって来たので、部屋に入れて、しばらく遊んだあと、一緒に寝た。目覚ましが鳴り、いつもの土曜日のように八時過ぎに起きる。携帯のワンセグが、何度試しても電波を受信しない。
おかしいな、こんなことはなかったのに。
まぁいいや。三人で階段を降りて、居間に入り、なんとか今日のにゃんこに間に合った。
今日は、相模原市の五歳のオスネコ君だ。電子ジャーの蓋を開けて、ほかほかのご飯をつまみ食いするのだが、一口食べたところで、ご主人に見つかってしまう。そうか、そうか。

朝食と身支度を済ませて、"Farm"を爆音で流しながら、地図に線を引く。
気軽にネコに会える。渋谷と新宿に近い。緑と河がある。自転車向きの道がある。駅前にFender Ampを常設したきれいなスタジオがある。選択肢は多くない。十年住んだ世田谷を抜け出て、多摩川を渡り、生まれ故郷の神奈川に戻るのが手っ取り早い。登戸〜向ヶ丘遊園〜久地〜溝口、小田急線、南武線田園都市線と走るラインを引きながら、そこまで横断マニアじゃねぇぞ、と突っ込んでおいた。

"I Want You To Know"、"Ocean In The Way"と加速するダイナソー節に、着替えたTシャツに汗が浮かぶ。フジロックのステージはどうだったんだろう。"Over It"であの素晴らしいビデオクリップを思い出し、"Whenever You're Ready"に目頭が熱くなり、二度繰り返して身体に入れた。殆どThe Zombiesと同じアレンジなのに、Dinosaur.Jrのオリジナルメンバーが三人で轟音を捻り出すと、2:57秒の間に、いとも簡単にマジックが生まれる。凄いな、凄いな。余韻を頭に残しながら、久方ぶりにクロスバイクを表に出し、空気圧を確認した。

Dinosaur Jr-Whenever You're Ready (Zombies Cover)

Oh I've been hurt
But I still love you
I've been hurt
Like this before, yeah


You're not teaching me a new thing
Try to realize
And call me when you're ready
Whenever you're ready


I know you left
But I still love you
And though I've cried like this before


You're not teaching me a new thing
Try to realize
And call me when you're ready
Whenever you're ready


But if you call me
You've got to treat me in a different way
And if you call me
You've got to listen girl to what I tell you


そういえば、昨夜のように家族全員に怒りを抑えきれずに、鉄パイプの椅子で台所の壁をぶち破って、世田谷通りから多摩川に抜けて、夜の多摩川を八時間逃げたのも、職に就く直前の夏だったな。あの時は通りの名前すら知らなかったけど、知ったところで、元通りなんだな。最近、正夢を見なくなったけど、デジャヴュは続くってことなのか。まぁ、それでもいい。感覚が戻りつつあるんだからな。"I was wet my seat!"思い出し笑いしながら、左右の視界が溶け出していった。

毎度お馴染み、青地に白抜き看板の「たま川」を上ってゆく。バッグからカメラを出して、写してみるが、明るい曇り空の明度はどうやって調整するんだっけと要らぬボタンをあちこち押す。

しかし、この鉄橋の塗装はもう少しクリアにならないものか。
晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、近景も遠景も、ぼんやりし過ぎて気が滅入る。周囲に溶け込み過ぎた故の、希薄過ぎる事なかれ主義の結果なんだろうな。


International Orangeの年間の塗料代は忘れたけれど、Golden Gate Bridgeには、意思が保持されている。建築の意図も規模も違うけれど、こんな短い橋のペンキ代くらい・・・。個人的には、Bianchiみたいに、空の色を参考にすればいいんじゃないの、と思った。



#0066cc、#0066ffあたりが合いそうだろうか。

カラーチャート
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88#.E3.82.A6.E3.82.A7.E3.83.96.E4.B8.8A.E3.81.AE.E3.82.AB.E3.83.A9.E3.83.BC.E3.83.81.E3.83.A3.E3.83.BC.E3.83.88


また渡った。
出るんだろ。


登戸、向ヶ丘遊園で、めぼしい物件の写真と名前を記録する。良さそうなところがいくつかあったが、それほど空きはなさそうだった。

お昼を過ぎ、駅前の飲食店の並ぶ辺りを走っていると、空腹を覚える。あっという間に向ヶ丘遊園駅に着く。踏切を越えて、駅の北側の物件を探すと、ますます腹が減って来た。ひとまず、溝口に出てから考えるか。だが走り出すと、なかなかいい石造りのような建物があり、近付いてみると、多摩区総合庁舎だった。図書館もある。そうだ、図書館も近くにないと。

数年前、GUITAR SHELTERでGibson Historic Collection 1956 Les Paul Reissue Gold Topが二十万円を切る価格で販売されており、試奏しに行ったことがある。無論、Neil YoungPavementStephen Malkmusのような、クランチ・トーンを肘で弾くような刻み込むギターが欲しかったからだ。想定していた程、太さと張りを感じなかったと告げると、「このギターはまだまだこれから弾き込まれて良くなるのだと思います」と返答してくれた、率直さがとてもいいなと思った。あの楽器屋が登戸にあるのもいい。まぁ、俺の腕のことも軽く言われてるのかなとも思ったが。就職活動が終わりつつある時期だったので、就職祝いにローンでも組もうかと暢気なことを考えていた腰の定まらないカッティングでは、音の粒立ちも良くなかったんだろうな。Gibson 1960 Les Paul Specialが入荷したら、弾きに行ってみようかな。
今度は、ガコンバギンとした音をギターと自分に期待したいね。

またうっかりGibson 1960 Les Paul Specialを探してしまった。Faded Cherryがいいね。

それはさておき、川崎街道に乗って溝口に行くつもりが、生田緑地が気になったので、稲生橋の交差点を左折せずに直進した。坂を上り、入り口の地図看板を見ると、岡本太郎美術館もあるようだ。自転車の乗り入れが難しいようだったので、車道のあまりに勾配の激しい坂を緑地沿いに上がっていった。
森というより、こんもりという感じ。

多摩川の上流の、Fishmansの『LONG SEASON』のジャケット撮影場所と噂がある奥多摩鳩ノ巣渓谷には及ばないが、少しだけそれを想起させる。宮崎駿が、確か、森の中の木の洞穴で眠るという童話でよく見られるシーンについて、西洋は森が乾いているからできるけど、日本の森はじめじめしているから難しい語っていた。地面は腐葉土で覆われ、木は年中雨と湿気で水を含んでいる。豊かだけれど、乾いた森というのも良さそうだなと思った。

http://www.amazon.co.jp/LONG-SEASON-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%BA/dp/B00005FJT9/ref=sr_1_13?ie=UTF8&qid=1249153118&sr=8-13

おぉ、UA以外の方には、みなさんサインをもらったことがある。植田さんには名刺を頂いた。
http://www.ribb-on.com/fishmans/
ZAKのサインは、"LOVE"だった。一つの共同体として、素晴らしかった、フィッシュマンズをみんなが愛していた、と話していたからだろうか。早稲田祭のときと、映画のときのバックステージショットがあるので、本にするときには掲載させて頂こうかな(笑)。

だいぶ雲が少なくなって、暑さが厳しくなってきた。昼ご飯を食べて、そろそろ戻るか。
ふらふらと来た道を引き返していると、バッグに入れておいた携帯がブルブルと震えている。メールにしては振動回数が多いなと思い、確認してみると、電源が落ちていた。入れ直しても、入らない。まぁいい。電話もメールもよこす人などいない。
ふと、左手にすっきりした低層ビルがあった。日経のロゴが掲げてある。こんなところに本社を移転したのかと、少し驚いたが、よく見ると、川崎別館とある。休日の昼、夕刊もさほど忙しくないのか、駐車場は空。すみません、少しだけ入らせて下さい、と密かに謝って場内に入った。この辺りの建築物や裏側の送電鉄塔に色調に配慮しつつ、新聞を思わせる、黒と灰色の配色の主張の案配がいい。程度の差はあれ、こうして意思が共有された場所は、気が引き締まって好きだ。