映画の新しさを更新することへの期待

東京国際映画祭のチケットは、今年は異様に取りにくかったですね。チケット発売初日の午後に渋谷のぴあに行ったけど、結局『エッセンシャル・キリング』と『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の2枚しか買えなかった。10月から仕事が始まるだろうとのことだったので、日程的に行く事が難しいだろうなとか、事前予約で申し込んでみたら、1枚1300円のチケットがぴあのシステム代とかいうもののために1900円を超えてしまい、やってられるか!と腹が立ってキャンセルしたりしたので、購入モチベーションは下がっていたのだけれど。今年は注目作が多いから、映画をわりと本腰入れて見ている人が殺到したのかも知れない。もしくは、『テトロ』のように、今回の上映を逃すと一般公開が厳しそうなので、二度と見られないかも、という不安感が大きくなったか。最近だと『シルビアのいる街で』も公開まで2年待たされたし。映画祭が映画の核シェルターのようになってしまうのは、いかにも非常時な感じで嫌だな。

さて、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』については、いち早く、瀬田なつきの大学(も?)・大学院の指導教官でもある梅本先生の評論が出ていた。
http://www.usodakedo.net/
http://twitter.com/usodakedo_
http://www.nobodymag.com/journal/archives/2010/0928_2354.php

瀬田なつきの魅力である「軽さ」というよりも「軽み」は、この新作でさらに突き詰められているようだ。先日のマタドールレコード21周年ライブでも素晴らしいパフォーマンスを披露していたキャット・パワーのような、半分天然で半分クレバーでキュートな印象を瀬田なつき作品には抱いてきたけれど、もしかするとSonic Youthに化けるかもしれないな、とふと思った。"riot"という言葉がよぎるところなんかが。「嘘だけど」というのは、『あとのまつり』のセリフだが、瀬田監督のtwitterを見ると、監督自身の口癖なのかも知れない。「嘘だけど」(嘘じゃなかった!)ジブリつながりなのか、『ルージュの伝言』が劇中歌として重要な場面で使われるそうな。

そして、日仏学院での上映からこちらも2年待った、アルノー・デプレシャンの『クリスマス・ストーリー』もついに11月20日より公開される。一時は公開が絶望視されていただけに、とても嬉しい。
http://a-christmas-story.jp/

http://www.nobodymag.com/journal/archives/2008/1203_0359.php

こちらもカイエ時代からデプレシャンとは付き合いが深い梅本先生の評論を読んで、見たいなとずっと願い続けてきた作品なので、感慨深い。
「軽み」とは真逆の、正統の、重い重い映画のようだ。そして、久し振りにスクリーンで、その重さをもふわふわと包み込む、白く美しい降雪を見ることが出来るのだろう。